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大学院の教育の見直しが必要

大学院修士課程からは、それぞれの学生の興味に合わせて研究を進めていくことができるというのが、日本の高等教育の方針です。確かに、それぞれが興味や関心に合わせて好きなことを学ぶことができるという点は、大学院という高等教育の場においては、ある程度ふさわしいと言えるかもしれません。しかし、必須科目を設け、ある程度共通した基礎的な事柄を学習するということも、必要なのではないかと考えることがあります。基本的なことは学部生のうちに終えておく必要があるというのもごもっともな意見ではありますが、共通した基礎的な学問をしっかりと学ぶことで、基礎力を高めることができるのではないかと考えます。こうした考えに至った理由は、海外留学での経験に基づいています。海外の大学院では、修士課程1年目は共通の科目を1年生全員が学ぶことになっています。そして、テストを受けることで基本的な学問を共通して学ぶという機会を得るのです。こうした経験は、2年次における専門科目の選択にも良い影響をもたらします。実際、日本の大学院で学んでいる時には、共有すべき基本的な事柄を、事前に学んでいないと感じるような学生も少なからずいたように感じます。基礎ができていないと、その上に応用をいくら積み重ねても、学問の知識としての定着を図ることは難しいという事実が大きく横たわっています。こうした認識の中で、1年次は必須科目をみっちりと学び、2年次より自らの専攻に従って研究活動を続けていくという方針のほうが、理にかなっているように感じるのです。たしかに、日本の大学院は自由度が高く、やる気のある人はどんどんと先へ進んでいくことができます。しかし、基本的な知識を共有するということも、その一方で、とても重要なことであるような気がします。そこで、カリキュラムの改変を行い、その研究科の学生として抑えておくべき基本的な事項を、きちんと基礎から学ぶことができる授業を設けるべきではないでしょうか。

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